我が家の金庫を持ち去ろうとした泥棒の話

あれは私が高校の入学式を迎えた、まだ桜の残る4月のある日に起きたことだ。その日は入学祝いをしようと、私と両親、弟、それから同居している母方の祖父母と一緒に、高級しゃぶしゃぶ屋に行った。普段は滅多に食べられないピンク色の霜降り肉を堪能し、酔っ払って気持ちよくなった父が近所の神社に寄って行こうと言い出した。それぞれお参りし、いい気分で帰宅したところ、異変に気づいたのだった。家に入った瞬間から、空気が違うことはわかった。窓もドアも戸締りをしたはずなのに、家の中の空気が動いている。そしてリビングに行くと乱雑に散らかっていた。「泥棒だ!」と誰かが騒ぎ、その後は警察が来て現場検証をしたり事情聴取をされたりと大変な事態だった。

k_018結論から言うと、窓ガラスを割られていたということ以外、大した被害はなかった。なぜなら我が家では貴重品はすべて金庫に入れてあるからだ。きっと泥棒さん…いや、その泥棒は散々引き出しや扉などを物色した結果、この家の全財産はリビングの端っこに置いてある金庫にあると思ったに違いない。その金庫、ゆうに100kgは超えるほどの大物であるにも関わらず、動かそうとしたような形跡があった。いつもの場所より数メートルほど移動してあったが、きっとあまりに重くて挫折したのだろうと思われる。きっと開けるに開けられず、動かすに動かせられず、結構長いこと家の中にいたのでは、と警察の人が言っていた。父が神社に行こうなんて言い出さなければ、現行犯で捕まえられたかもしれないのに…とみんなで父を責めると、「何を言う。俺が神社で家内安全を祈ったから、被害がこれだけで済んだんだ」と開き直った。いやいや、被害がこれだけで済んだのは、おじいちゃんがもしものときのためにと大きい金庫を買っておいてくれたおかげだよ…。まあ、鉢合わせして誰かがケガしなかったのは、確かに父のお陰かもしれないけれど。